ボクシングとキックボクシングは、名称だけであれば日本でも知っている人は多いです。
しかし両者の違いが何なのか、いまいちよく分からないという人も多いでしょう。
筆者はボクシングとキックボクシングを両方経験しており、
・ボクシング:プロライセンス取得
・キックボクシング:アマチュア選手として活動
という段階まで技術を高めてきました。
本記事ではこの経験をもとに、ボクシングとキックボクシングの違いを分かりやすく解説していきます。
競技として全くの別物

まずおさえておきたいのは、ボクシングとキックボクシングは似ている点もありますが、競技としては全くの別物ということです。
プロ選手がボクシングからキックボクシングへ転向(その逆もあり)することがありますが、そのデビュー戦で勝つことが難しい理由もここにあります。
転向前の競技の知識と技術は活かせるものもありますが、修正が必要なものも多く適合させるまでに時間がかかるのです。
いくら練習しても試合では感覚が異なるため、適合しきれず負けてしまうというのが、よくあるパターンです。
だから転向後の初戦で勝てるのは、とても凄いことなんです。
ボクシングとキックボクシングの違い

ボクシングとキックボクシングには、具体的にどういった違いがあるのでしょうか。
細かい点を挙げればキリがありませんが、主な違いとしては以下の5つです。
攻撃の種類
ボクシングは認められているのがパンチのみ、さらに言うと拳部分だけです。
そのため、基本的な攻撃の種類は非常に少なく、未経験の人も比較的覚えやすくなっています。
キックボクシングは、パンチに加えて以下の種類が加わります。
・キック
・膝蹴り
・肘打ち
・回転技(バックブロー、バックスピン)
・首相撲
どこまで認められるかは試合のルールによって異なるため、これら全てが使えるとは限りません。
しかし攻撃の選択肢が多くなるのは間違いないので、意識を向けるところも多くなります。
ただしキックボクサーの中にもパンチの方が得意な選手とキックの方が得意な選手がいるので、キックボクシングの試合なのにバチバチにパンチを打ち合ったりすることもあるのが面白いところです。
有効な攻撃範囲
ボクシングでは上半身のみに攻撃が認められており、数ある格闘技の中でも攻撃範囲が非常に狭いです。
だからこそ、いかに相手の防御をかいくぐって倒すかが難しく、緻密な戦略が求められます。
キックボクシングは下半身(両足)への攻撃も認められており、ボクシングに比べて攻撃可能な範囲が大きく広がります。
どこを打ってどう倒すか(パンチで攻めてKOするか、キックで攻めて足を潰してKOするか)が問われるので、多彩な戦略が必要です。
ボクシングはパンチのスペシャリスト同士のヒリヒリする攻防が、キックボクシングは多種多様な展開がそれぞれ見応えとなっています。
基本的な構え方
ボクシングとキックボクシングでは、構え方に大きな違いがあります。
ボクシングは前傾姿勢で重心を地面に落とす、クラウチングスタイルという構えが一般的です。
両足への重心の比重は、『7:3』か『6:4』くらいになります。
攻撃がパンチのみのため、身をかがめて攻撃の当たる範囲を狭くしつつ、自分のパンチを強く打つために重心を下に落とします。
対してキックボクシングは、重心を上にして後ろ足に比重をかける、アップライトスタイルという構えを取ることが多いです。
重心を落としていると相手のキックに反応できず、自分もキックが打ちづらくなってしまうためです。
両足への重心の比重は、『3:7』もしくは『2:8』くらいになります。
先述の転向後のデビュー戦で負ける場合、それぞれ転向前の構え方のクセが抜けきらず、対応できないまま終わるケースが少なくありません。
ラウンド数
ボクシングとキックボクシングのラウンド数は、基本的に以下の通りです。
なお、1ラウンドは3分が基本です。
ボクシング:4or6or8or10or12ラウンド
キックボクシング:3or5ラウンド
ボクシングはプロライセンスの等級がA・B・Cの3つにわかれており、それぞれでラウンド数が異なります。
※A級:8ラウンド、B級:6ラウンド、C級:4ラウンド
キックボクシングは、各団体によってラウンド数が異なるのが現状です。
ラウンド数が異なるとペース配分が変わってくるので、展開も大きく変わります。
団体(興行)
ボクシングもキックボクシングも、世界的に数多くの団体が存在しています。
しかしボクシングの場合、特に権威のある『主要4団体』と呼ばれるものがあります。
・WBA(World Boxing Association:世界ボクシング協会)
・WBC(World Boxing Council:世界ボクシング評議会)
・IBF(International Boxing Federation:国際ボクシング連盟)
・WBO(World Boxing Organization:世界ボクシング機構)
それぞれに王者が存在しますが、統一戦と称して王者同士が闘い、勝利した方が『統一王者』となることもあります。
ではキックボクシングはどうかというと、ボクシング以上に団体が乱立しているのが現状です。
日本国内だけでも、10箇所以上の団体が存在します。
特に有名なのは『K-1』や『R.I.S.E』ですが、ほかにも新しく団体が立ち上がっては、消滅を繰り返しています。
ボクシングと同じくそれぞれに王者が存在しますが、統一戦が行われることは基本的にありません。
以上の背景から、ボクシングと比較するとキックボクシングは団体の王者といっても、権威が薄い状態です。
どっちが強い?

ボクシングとキックボクシングについて、「どちらが強いのか」と質問してくる人がたくさんいます。
しかしこれには正解がなく、『ルールと選手の実力次第』というほかありません。
仮にボクサーとキックボクサーが闘うにあたって、ボクシングルールであればボクサーが圧倒的に有利ですし、キックボクシングルールであればキックボクサーが圧倒的に有利です。
自分が普段から闘っているルールの方が有利なのは、言うまでもありませんよね。
また、その選手が新人なのか、世界王者なのかによって実力には大きな差があります。
例えば新人ボクサーと世界王者キックボクサーだったら、ボクシングルールでもキックボクサーの方が強いかもしれません。
絶対的な基準をもとに比較できないので、どっちが強いのかは判断できないでしょう。
それぞれの魅力を知って楽しもう!

日本ではボクシングの方が、知名度として高い傾向にあります。
パンチだけという非常にシンプルなルールで、格闘技経験のない人でも分かりやすいというところなどが、その理由かと思います。
ではキックボクシングの方が劣っているのかというとそれは間違いで、キックという要素が入ることで、ボクシングとは全く異なる展開が生まれます。
それぞれ独自の魅力があるので、見応えに優劣はありません。
YouTubeや各種配信サービスでたくさんの試合を観れるので、気になる人はぜひ両方を観てみてください。
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