ボクシングの対人練習の1つに『マスボクシング』があります。
相手にパンチを当てず、一定の距離感を保ちつつ行う安全な試合形式の練習です。
両者に体重差があってもできますし、プロ選手志望から趣味でやっている人まで、誰もが気軽にできるものとしてどのボクシングジムでもよく行われています。
しかしマスボクシングにも関わらず、パンチを当ててくる人が少なくありません。
こちらは当てないようにしているのに、構わず当ててこられて困っていないでしょうか。
私自身、これまでパンチを当ててくる人と何度もマスボクシングを行い、悩んだ経験があります。
本記事ではパンチを当ててくる人に対して、どのように対処すればよいのかを解説します。
マスボクシングをする目的

まずおさえておきたいのは、マスボクシングが何のための練習であるかということです。
実は初心者だけでなく、ある程度の経験者でもこの点を理解していない人が多くいます。
そしてマスボクシングなのにパンチを当ててくる人は、ほぼ100%この目的を理解できていません。
マスボクシングをする目的は主に以下の3つです。
実戦感覚を養う
単純なパンチの練習であれば、ミット打ちやサンドバッグ打ちで十分です。
しかしボクシングで戦う相手は、ミットでもサンドバッグでもなく人間です。
動かなくて打ちやすい的であるミットやサンドバッグと違い、リング上を縦横無尽に動く人間はなかなかパンチを当てさせてくれません。
また、フェイントやスピードの緩急など、様々なテクニックを使ってきます。
その中で自分がどのくらいパンチを出したり動けるのか確認しつつ、実戦感覚を養うことができるのです。
スパーリングではお互い全力でパンチを打つので、怪我をする可能性が高く危険ですが、マスボクシングであればその点もクリアできるというわけです。
パンチの距離感を掴む
ボクシングにおいて、距離感を掴むトレーニングは非常に重要です。
どれくらい距離があれば相手のパンチをもらわずに済み、逆に自分のパンチはどれくらいの距離まで届くのか。
これを把握できているかどうかで、ボクシングの実力は大きく変わります。
プロ選手の試合やアマチュア選手の大会で、勝敗を分ける一因はこの距離感です。
マスボクシングでパンチの距離感を掴むことで、今より何段階も上のレベルにいくことができるのです。
攻撃も防御も、距離感を制した方が有利なのは間違いありません。
スパーリングをやれるかの判断材料
「マスボクシングとスパーリングは全く違う」という人がいますが、パンチを当てるか当てないかだけで、根本的には同じものです。
だからマスボクシングをちゃんとできない人は、マススパーリングも強くないことがほとんどです。
プロ選手志望や試合出場希望の人は、当然スパーリングの練習が必要ですが、危険性が高いのでいきなりやらせるジムはまずありません。
マスボクシングでどの程度の実力があるのかをチェックされて、問題ないと判断されたらスパーリングも練習する・・・という流れです。
つまりマスボクシングは、スパーリングをやらせても大丈夫か判断するための材料なのです。
マスボクシングがしっかりやれている人は、スパーリングもできるレベルにあるということですね。
パンチを当ててくる人の特徴

マスボクシングなのにパンチを当ててくる人には、3つの共通する特徴があります。
プライドが高く勝敗にこだわっている
マスボクシングは勝敗を競うのではなく、お互いを高め合う練習です。
しかしプライドが高い人は、なにかと勝ちにこだわります。
だからパンチを当ててきて、自分が勝った気になりたいという思惑があります。
そして終わった後に「あそこはもっとこうした方が~」などと、偉そうに相手に教えたがります。
『自分は強い!』という自信を持っているので、それを証明したいのでしょう。
ただ本来そのように教えたり指導するのはトレーナーの役目です。
パンチが当たった感触がないと不安
マスボクシングはパンチを当てないので、相手がダメージを負うことがありません。
それでも「実際だったらこのパンチは当たったor当たってない」というのは何となく分かるのですが、中にはそれが分からず不安になる人がいます。
こういう人は当てることで自分のパンチが良いのだと自信を持つので、距離をどんどん詰めて当てようとしてきます。
危ないと思って下がっても延々と追いかけてきますし、パンチを打って牽制してもこちらが当てないようにしているので止まらず突っ込んできます。
また、パンチをかわせばかわすほどムキになってくるので、厄介としかいえません。
実力不足
マスボクシングで当ててくる人は、ハッキリ言うと実力がない人です。
強い人はパンチを当てなくても、キレやスピードが凄まじいです。
防御も上手く、何をやっても崩せるイメージがつきません。
対して弱い人は、攻撃することしか考えておらず、構えも動きも単調です。
こちらのパンチをかわしたり防御する素振りを見せず、ひたすら前に出てくるだけです。
そしてマスボクシングでパンチを当ててくるのは、総じて後者のタイプです。
実力不足だからこそ、パンチを当ててしまうとも言えますね。
パンチを当ててくる人への対処法

マスボクシングでパンチを当ててくる人は、何をどうやっても改善することがほぼありません。
なのでこちらが自衛することが重要です。
有効な対処法として、以下の4つがあります。
トレーナに相談する
まず最初にすべきは、トレーナーに相談することです。
トレーナーは会員の安全を守る責務があります。
マスボクシングでパンチを当ててくる人は、安全を脅かす存在にほかなりません。
なのでトレーナーに「○○さんとマスボクシングやると、いつも怪我しそうで怖いです」などと相談しましょう。
大抵の場合、トレーナーもその人に問題があると分かっているものの、相手も会員なので対応に困っているケースが多いです。
しかしほかの会員から声が挙がっているとなれば、何かしらの対応をせざるを得ません。
また、後々こちらと相手の間でマスボクシングのことでトラブルが起きた際も、事前にトレーナーに相談していた事実があれば有利になります。
防御に徹する
マスボクシングでパンチを当ててくる人は、こちらの攻撃などお構いなしです。
自分が攻撃することしか頭にないので、どれだけカウンターを入れて反撃しても、効果はありません。
攻撃すればどうしても隙ができるので、相手がそこに突っ込んでくれば怪我をしてしまいます。
そこで有効なのが防御に徹することです。
相手は調子に乗ってどんどん打ってくると思いますが、全て防御してやりましょう。
防御の練習に最適ですし、相手も疲れてくるのでどんどん動きが鈍くなってきます。
「あなたの攻撃は無意味ですよ」と分からせてやりましょう。
前に出て距離を詰める
マスボクシングでパンチを当ててくる人は、とにかく前に出てきます。
攻撃のことしか考えてないので、後ろに下がって距離を取ることができません。
そこであえて前に出て距離を詰めてみてください。
ほぼゼロ距離になると、強いパンチは打てなくなります。
また、普段とは違う動きをいきなりされると、相手は戸惑っていつものペースでやれなくなります。
一見危険なように感じますが、実は有効な手段なのです。
パンチを当ててくる人とはやらないと宣言する
こちらが色々工夫してみても、どうしてもうまくいかないことはあります。
そんな時の最終手段は、「マスボクシングで当ててくる人とはやらない」と、トレーナーに宣言することです。
トレーナーも会員に怪我をされたりトラブルになったら困るので、希望通りにしてくれます。
これでもう危ない目に遭うことはありませんし、悩まされる必要もありません。
また、それがキッカケで他の人も同じように宣言するようになって、マスボクシングで当ててくる人に考え直させることができる可能性もあります。
パンチを当ててくる人に泣き寝入りしない!

マスボクシングでパンチを当ててくる人は、色々と勘違いしてしまっていることがほとんどです。
自分が強いとか、フルパワーではないから多少当てても大丈夫とか、相手の心情を考慮できていません。
トレーナーがいくら注意や指導しても改善せず、マスボクシングを禁止したり、悪質であれば退会処分というケースも極稀にあります。
もしこういう人に悩まされているのであれば、泣き寝入りせず本記事でご紹介した対処法を取ってください。
マスボクシングは本来、誰もが安全に行える素晴らしい練習です。
一部の約束事を守れない人のせいで、めちゃくちゃにされるのはもったいないです
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