有名選手がキックボクシングからボクシングへ転向すると、ニュースで大きく取り上げられます。
近年だと『神童』と呼び名の高い那須川天心が転向したことが、格闘技界でも大きな話題となりました。
両者は名称が似ていることもあって、ほぼ同じ競技だと思っている人が少なくありません。
格闘技をよく知らない人からすると、「転向するとそんなに変わるの?」と疑問に思っている人は多いのではないでしょうか。
しかしキックボクシングからボクシングへの転向は、想像以上に大きな変化です。
本記事では、キックボクシングからボクシングへ転向した経験のある筆者が、詳しく解説していきます。
『別競技』だと実感する

実際に転向してみて実感するのは、キックボクシングとボクシングは全く異なる競技ということです。
ルールを比較すると、いかに違うものかというのが見えてきます。
パンチを攻撃手段に使うのは同じですが、そこにキックも加わるかどうかで、勝手が全く違ってきます。
キックボクシングの経験が有利となる面もありますが、修正が必要な点もあるので、最初は思うようにいかないことも多いです。
ただ、慣れてくるとキックボクシングの経験と良い具合に混ざっていくので、真面目に練習を継続することが大切です。
苦労したこと

キックボクシングからボクシングへの転向にあたり、苦労したことは主に以下の4つです。
距離感
キックボクシングとボクシングは、距離感が全く異なります。
ボクシングはパンチのみなので、キックボクシングより相手との距離は近くなります。
キックボクシングの距離では遠すぎて、パンチが思う通りに当たりません。
どの距離なら自分のパンチがしっかり当たって効かせられるのか、どの距離が安全なのかを探り直す必要あります。
構え方
キックボクシングは基本的にアップライトというスタイルで、相手のキックに反応できるように重心を後ろ足に置くことが多いです。
しかしボクシングはクラウチングというスタイルで、重心を前足に置くことが多いです。
キックボクシングの構え方のままでは、懐に入られると弱く、パンチに威力も乗りません。
元々の自分のスタイルにもよりますが、ボクシング用に修正が必要になってきます。
ステップワーク
キックボクシングでは、ステップワークはそこまで多用することがありません。
パンチはブロッキングで、キックはカットしてのガードをとることが多いです。
対してボクシングはステップワークを駆使して、相手のパンチをダッキングやウェービングなどでかわします。
ステップワークは反復練習で身につける必要があり、最初は苦戦します。
また、ウェービングは相手のキックをドンピシャでくらう恐れがあるため、キックボクシングではほとんど使いません。
そうしたテクニックも練習が必要なので、覚えることはたくさんあります。
戦略の組み立て
ボクシングはパンチのみで、攻撃手段も攻撃可能な範囲も、キックボクシングより圧倒的に少なくなります。
そのため、キックボクシングで得意としていた戦略が使えなくなることが多く、改めて組み立て直す必要が出てきます。
相手をどのようにコントロールして、コンビネーションを使っていくか、イチから考えることになるのです。
それまでキックボクシングをやっていた身からすると、パンチだけでどう闘っていくのか、悩むことは多いです。
転向したことによるメリット

転向すると苦労は多いですが、そのぶんメリットもあります。
パンチのレベルが格段に上がる
当たり前ですが、パンチのみをひたすら練習するので、威力やスピードはどんどん上がっていきます。
特にキック主体のスタイルだった場合は、レベルが上がっていくのが実感しやすいでしょう。
キックボクシングの時はパンチでなかなか倒せなかった人も、ボクシングをやるとパンチで倒せるようになるので、自分で自分に驚きます。
ボクシングの奥深さを知れる
ボクシングのルールはシンプルですが、それ故に難しく奥深いです。
練習をやればやるほど、それに気付いていきます。
傍からは分からない細かいテクニックや駆け引きも多く、ボクシングの凄さを理解できるようになります。
パンチのスペシャリストと呼ばれる所以もよく分かります。
転向後に活躍している選手の凄さが分かる
キックボクシングからボクシングへの転向は、那須川天心や武井由樹がしたことで有名です。
ほかにもキックボクシングから総合格闘技、空手からキックボクシングなど、格闘技を転向する人は少なくありません。
しかし転向する場合、それがいかに難しいことかは、なかなか分かりづらいでしょう。
実際に自分が転向すると、それを身をもって実感できます。
転向後の選手がデビュー戦で負けるケースは多々ありますが、その理由も分かるようになります。
これが分かると試合をより楽しく観れますし、格闘技の面白さをさらに感じられます。
転向は簡単ではないが楽しい!

キックボクシングからボクシングへ転向後、しばらくは試行錯誤する日々が続きます。
キックボクシングでの経験をいったん脇に置いて、新たにゼロから学び直す姿勢が必要となるので、いかに気持ちの切り替えができるかが問われるでしょう。
「キックボクシングをやっていたから、ボクシングでもいける!」という思い込みは危険です。
しかしだからこそやりがいがあるし、上達すると楽しく嬉しいです。
プロでやるかアマでやるか、単に趣味目的でやるかによって大きく変わりますが、いずれにしても挑戦したい気持ちがあるなら、思いきって転向するべきでしょう。
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