「選手として試合に出るつもりはないけど、ボクシングのプロライセンスは取得したい」
こう考えている人は、実は少なくありません。
私自身、格闘技をそれなりに長くやってきて、ひとつの結果を残したいと思いプロライセンス取得を目指しました。
プロライセンスの取得のみを目標にするのであれば、難易度はそこまで高くありません。
しかしそのためにどんな練習をして、どう過ごしていくのか、具体的な情報ってあまり見かけませんよね。
本記事ではプロライセンス取得を考えている人に向けて、筆者が当時やっていた練習や日々の過ごし方を紹介していきます。
もちろんこれが正解ではなく、もっと練習をしている人はたくさんいらっしゃいます。
あくまで参考のひとつとしてお読みください。
プロテストに向けた練習内容

プロライセンスを取得すると、プロボクサーとして試合をすることが可能となります。
実際に試合に出場するか否かはともかく、「お客さんに見せられるだけの闘いをできるのか」と「プロとして試合できるだけの実力があるのか」を求められるということです。
ほかのスポーツではプロライセンスを取得していなくても、プロの選手として試合に出場することができますが、ボクシングはプロライセンス取得が必須となっています。
取得のみを目標にしていようが、日本王者などのタイトル戴冠を目標にしていようが、プロテストを受けて合格しなければなりません。
同じプロボクサー志望という枠で挑戦することになり、その練習内容はハードです。
ここでは当時やっていた練習を全て並べていきます。
ボクシングジムでの練習
筆者が所属していたボクシングジムは、週1回のみ休館日がありました。
本来であれば週6日練習するのがベストでしたが、筆者は仕事諸々の都合で週4〜5回の練習となっていました。
練習メニューは、基本的に以下の通りです。
・シャドーボクシング:3R
・サンドバッグ打ち:6〜7R
・ミット打ち:2R
・マススバーorスパー:2R
・フィジカルトレーニング(腕立て、腹筋、クランチ)
練習時間は1回あたり、1〜1時間半程度です。
社会人が日中仕事をしながらとなると、時間をどう捻出して、いかに質の高い練習をするかがポイントとなります。
筆者はこのペース以上で練習すると、集中力が保てず疲労も溜まりやすいと感じたため、やっていませんでした。
練習中はとにかくボクシングのことだけを考えて、雑念を入れないように意識していました。
朝のロードワーク
ボクシングジムでの練習に加えて、仕事前にロードワークをしていました。
内容としては以下の通りです。
・ジョキング(10km)
・400mダッシュ(4〜5本)
これを週3〜4回のペースで行います。
筆者は朝が弱く起床直後は動ける状態ではなかったので、起床後30分間は軽いストレッチをしつつ、身体を起こすようにしていました。
プロテストでは基本的な技術はもちろん、体力面も見られるのでロードワークは必要です。
休息日
休息日は週2日程度で、ストレッチを朝と夜にそれぞれ30分程度するくらいでした。
あとはボクシングの試合映像や、技術解説の動画をYouTubeで観て勉強していました。
普段の仕事に加えてボクシングの練習とロードワークをこなすことは、かなり心身に負荷がかかります。
正直に言えば、休息日はボクシングのことを考えたくない、というのが本音でした。
仕事との兼ね合い

プロテスト合格のために仕事の調整がどの程度可能かは、非常に重要です。
ボクシングジムは営業時間が決まっていますし、スパーリングは相手になってくれる人が限られています。
自分の都合で好きな時間にやる…ということはできないので、こちらが都合をつけなくてはいけません。
残業が多い等でスケジュールの見通しが立たない状態だと、練習がまともにできず所属ジムからプロテスト受験さえ許可されないでしょう。
私は当時していた仕事は残業がほとんどなく、固定シフト制でイレギュラー勤務もありませんでした。
休みも比較的自由に取れたので、この点は大いに助かりました。
プロテスト合格までの過程でつらかったこと

私がプロテストに合格するまでにかかった期間は約1年です。
今となってはあっという間だったと思っていますが、当時は途中で何度も心が折れそうになりました。
その中でも以下の3つはとくにつらかったので、ここに挙げておきます。
受験申し込み後の毎日スパーリング
プロ試験では、実技で2分2Rのスパーリングが定められており、これが合否を分けます。
そのため、スパーリングを可能な限り練習して、当日に備えなければなりません。
私が所属していたジムでは、プロテストへの受験申し込みをしてから、毎日スパーリングをすることなっていました。
スパーリングはお互い試合のように本気で打ち合うので、消耗が激しい練習です。
毎日やりたくない気持ちを抱えながら、ここが踏ん張りどころと思いやっていました。
この期間は本当にきつかったです。
常に頭にプロテストのことがちらつく
私はそこまでメンタルが強いタイプではなく、プロテストには恐怖を抱えていたのが正直なところです。
仕事中もプライベートで遊んでいる時も、頭の片隅には常にプロテストのことが浮かんでいました。
だからこそ「終わったらやりたいことをやろう!」と、自分を鼓舞していました。
真面目で神経質な人ほどなりやすい状態かと思うので、頭のスイッチをどう切り替えるか、自分なりの対処法を考える必要があります。
会長からのダメ出し
スパーリング後に会長から、ほぼ毎回ダメ出しがありました。
ただその内容が技術的なことというより、精神論が多く具体的にどうすればよいかが不明瞭でした。
もちろんメンタル管理は重要ですが、何をすればよいかというアドバイスはあまりなかったです。
言い方もきつくて、「金を貰ってやっているわけではないのに、なぜそんなことまで言われなきゃいけないんだ…」と思ってしまうこともありました。
しかしこれが逆に、「早くライセンス取って辞めよう!」とある種のモチベーションにもなったので、結果オーライと今では思っています。
ただ本来こんな思いしなくても済むはずなので、ジム選びは重要です。
合格した時の気持ちとその後

私は幸運なことに、1発でプロテストに合格することができました。
その時の気持ちは、カッコつけずに言うと「これで終われる!」という清々しいものでした。
プロテストのためにしてきた数々の苦労がようやく報われて、もう不安や心配に思うことはなくなったのです。
これをひとつの区切りしようと決めていたので、その後は試合することなく純粋にボクシングを趣味として楽しむようにしました
本気でやればできる!

ボクシングのプロライセンスは、その気になってやれば誰にでも取得できるチャンスがあります。
プロライセンスを取得したからといって、日常生活が変わることはありません。
プロボクサーとして試合せず、格闘技関連の仕事につかないのであれば、持っていても実用性はないでしょう。
しかし、これがあることで自分に自信を持つことができますし、周囲からの見え方が変わるのも事実です。
何だかんだで、形として証明できるものがあると人間は安心するのです。
プロテスト合格に近道はなく、ひとつずつ努力していくしかありません。
だからこそ、合格した時の喜びもひとしおです。
大変なことは多いですが、少しでもやってみたいという気持ちがあるのならば、挑戦してみることをおすすめします。
コメント